歴史には「人間ドラマ」がある
私が歴史に惹かれる最大の理由は、歴史的事実の羅列ではなく、その中に息づく「人間ドラマ」を感じられるからです。特に中世ヨーロッパ、なかでもフランスやイタリアといった地中海沿岸の国々の物語には、強く心を惹かれていました。
その思いから、基礎課程演習は「ハプスブルグ帝国の歴史」の授業を履修しました。そこで私と同じように世界史に強い興味を持つ学生たちに出会いましたが、驚いたのはその関心の幅広さです。同じ「世界史好き」でも、興味を持つ時代や地域は一人ひとり全く異なります。歴史という広大な分野の中で、それぞれが異なる「人間ドラマ」に魅了されていることに、学問の懐の深さと個性の豊かさを感じ、心を動かされました。
また、「世界史への招待」という授業が、特に印象に残っています。
この授業は、四半期ごとに担当教授が変わるオムニバス形式で、特徴的だったのは、座学だけでなく体感型の学びが多かった点です。例えば、関連する時代の映画を視聴したりしました。これ以外にも、「東京ジャーミイ」というモスクに見学に行く授業がありました。荘厳な建築や祈りの空間を肌で感じる体験は、それまで馴染みのなかった分野への興味も一気に引き出してくれました。
なかでも、特に興味深かったのが、オランダ史を専門とする先生の授業です。授業では映画『八十日間世界一周』を鑑賞したのですが、もともと原作に親しんでいたこともあり、個人的にも非常に引き込まれました。しかし、先生が示したのは、単に物語として楽しんでいたときとは異なる「分析の視点」でした。好きな作品だからこそ、それと異なる「切り口」で分析する面白さを知り、1つの事象を多角的に見ることで、全く新しい発見が生まれることを実感しました。これらの授業を通して、単なる「好き」から、多様な視点で物事を分析し、背景にある「なぜ」を探究する「学問的な面白さ」へ深まっていったように思います。
歴史学は、ダイナミックで「学際的」な学問
学科選択では、1年間多様な学問に触れ、それぞれの学問の面白さを実感しながらも、あらためて世界史が好きだと再認識することが出来ました。迷わずに選択できた理由のひとつに、史学科の先生がおっしゃった「歴史はどんな物事にも絶対に関わってくるもの」という言葉があります。いまある文化や社会の仕組みも、すべて歴史の上に成り立っており、そのすべてに繋がる学問である点に、強く惹かれました。
実際に史学科で専門的に学び始めると、この言葉には「続き」があることに気づかされました。それは「歴史を学ぶにはあらゆる他分野の知識が必要」ということです。例えば、3年次に履修していた「世界史文献講読」の授業では、アジアとの貿易を独占するために設立された世界初の株式会社である「オランダ東インド会社」について、英語の文献講読をしました。そこでは、「なぜ」「どんな仕組み」で「株式会社」を成立させたのかを理解するために、経営学の知識も必要とされました。あらためて、歴史学は、ただ過去の事実を暗記するのではなく、経済学、社会学、時には理化学など、多様な分野の視点を使って「なぜそうなったのか」を解明していく、非常にダイナミックで「学際的」な学問なのだと痛感しました。
物事の繋がりと背景を見抜く力が養われた
私が所属するゼミは、3?4年生合同で、おもに文献講読と优德体育,优德w88体育app発表の2つが軸となって進められます。授業の最後には必ず全員が1回以上発言する意見交換の時間があり、受動的に聞いているだけではディスカッションになりません。そのため、常に「論点は何か」「自分ならどう考えるか」を意識するようになりました。このゼミでの経験を通じて、人の話を深く聴く傾聴力と、議論の流れを読んで自分の考えを論理立てて言語化する力が鍛えられたと思います。
また、点として存在する歴史的事実と事実の間に横たわる、目に見えない文脈や因果関係を考察することを繰り返すことで、物事を表面的?単一的にではなく、多角的?複眼的に捉える視座が養われたように思います。
このようにして培われた「物事の繋がりと背景を見抜く力」は、将来、私たちが直面するであろう複雑な社会現象や未知の課題を読み解き、的確な判断を下すための強力な基盤となると確信しています。
- 史学科
※所属?肩書きを含む記事内容は、インタビュー時(2025年)のものです。